なぜこの赤が記憶に残るのか

First Glass Setの最後に置いた赤に求めたのは、飲み終えたあとに、ふと思い出すこと。
「さっきの、悪くなかったな」そんな余韻です。
この赤は、心地良い印象が残ると思いました。
それは、ゆっくりとのんびりと何も考えずに飲んでほしい。
生産者もこんな想いを込めて造っているからだと思っています。
赤ワインには、「わかって飲まなければならない」という先入観があります。
最初の一杯で、その壁を作りたくありませんでした。
候補の中には、もっと分かりやすかったり、インパクトのある赤もありました。
でもそれらは、記憶には残っても、最初のワインとしては難しさを感じてしまうかもしれないと考えました。

この赤は、飲み終えたあと、すぐに感想が出てこなくてもいい。
でも時間が経ってから、「あの赤、よかったかも」とふと思い出してもらえたら十分です。
First Glass Setの最後に、この赤を置いたのは、ワインの時間を、静かに記憶へ残したかったから。
終わりが穏やかだと、人はまた、開きたくなります。
この赤は、その余白を残すための一本です。
▶︎この文章で触れたワインは、First Glass Setの一部です

