ワインが、大量生産に飲み込まれていく時代に

ワインが、大量生産に飲み込まれていく時代に

ワインの世界が変わってきています。


かつては小さな醸造所が、土地と向き合い、葡萄と対話しながらワインを作っていました。


でも今、多くの生産者が大量生産と効率化の波に飲み込まれ、品質よりも流通量を優先するようになっています。


スーパーの棚に並ぶワインの数は増えました。


でも、本当に飲みたいと思えるワインは、むしろ探しにくくなった気がします。

私がワインを選ぶとき、必ず問うことがあります。

 

「この一本に、想いがあるか」

たとえば、イタリアのCantina Doveri

 

このワイナリーが生産するのは、”l'Usciolo"という一種類のワインだけ。

年間わずか7000本。品評会にもほとんど出しません。


住宅地にひっそりと佇む小さな醸造所で、ただ、最高のワインを作ることだけに集中しています。


「小さな扉」という意味を持つその名前の通り、知る人だけがたどり着く場所。


現地ではソムリエでも手に入らないほど人気になっていますが、それでも生産量を増やそうとしません。


なぜか。


大量に作れば、あの味わいは出せないから。

 

それだけのことです。

あるいは、ヴェネトのFalezze


70を超える世界のミシュランの星付きレストラン、や有名店の数々が顧客に名を連ねる、アマローネの造り手です。

年間生産量は1万本に限定。


多くのアマローネ生産者が大量生産に舵を切る中、Falezzeは伝統的な技術と自然を尊重したワイン造りを続けています。


造り手の妻、ソフィアはアーティストで、それぞれのワインのラベルを手掛けています。


一本一本が独自のストーリーを持ち、ラベルにその個性が宿っています。


味だけではなく、そのワインが存在する理由ごと、届けようとしています。

Tenuta Demaioの生産者はこう言います。


「自然の色こそ一番美しい。自然の味こそ一番美味しい。」


清澄も安定化も無菌濾過も行わず、亜硫酸塩はほとんど添加していません。

オーガニックにこだわりながら、それでも味わいは全て美味しく仕上がっています。


私が初めて分析表を見たとき、その数値に思わず驚いたほどです。


自然派を謳いながら味が二の次になっているワインとは、まるで違います。


信念と技術が両立している、稀有な造り手です。


私がAmusez vousで扱うワインには、必ずストーリーがあります。


効率や利益のために妥協した生産者のワインは、どれだけ価格が魅力的でも選びません。


土地への愛、葡萄への敬意、飲む人への想い——そういうものが一本の瓶に込められているかどうかを、私はいつも確かめています。


大量生産のワインが棚を埋め尽くす時代だからこそ、そういう一本を届けたいと思っています。


グラスに注がれるその一杯が、誰かの意志と情熱が込められたものであってほしいと思っています。


それが、私の選ぶ理由です。