フランスのパティスリーで働いていたとき、毎日驚いていたことがありました。
朝6時の開店と同時に、扉の前で待っているお客さんがいます。
夕方には、今日の夕食に間に合わせようと閉店ギリギリに滑り込んでくる方も。
中には「今夜はこんな料理とチーズとワインにするんだけど、どのパンが合うかしら?」と聞いてくれる方もいました。
フランス人にとって、その日のバゲットを買いに行くことは毎日の当たり前の習慣なのだと、働きながらだんだんわかっていきました。

一度、友人の家に泊まっていたとき、夕食の準備中に友人のお母さんがこう言いました。
「大変、バゲットを買うのを忘れた!」
そして、近所の方に借りに走って行ったのです。
それほど深刻な問題なのかと思いましたが、フランス人にとってバゲットがないのは、本当に一大事なのだそうです。
同じように、ワインも欠かせないものでした。
お気に入りのワインが手元になかったときには「こんなに料理が揃ったのに最悪だ」と嘆きます。
でもワインだけは、何かしら必ず家にストックがあるお家がほとんどでした。
バゲット、チーズ、ワイン。
フランスの食卓に当たり前に並ぶものを見ていると、食事の時間をどれだけ大切にしているかが伝わってきます。

毎日のことだから、特別なものでなくていい。
でも、ちゃんと揃えておく。
そういう小さな積み重ねが、食卓を豊かにするのだと思います。
ワインを日常にそっと置いておく、そんな一本をぜひ見つけてみてください。

