ワインを手に取るとき、最初に目に入るのはラベルです。
ブランド名、産地、葡萄の品種…。
並んでいる情報を読み解こうとして、少し難しいなと感じた経験がある方もいるかもしれません。
ワインのラベルのことを、フランス語でエチケットといいます。
この言葉を知ったとき、なるほどと思いました。
エチケットとは、礼儀やマナーを意味する言葉でもあります。
ワインのラベルがエチケットと呼ばれるのは、そこに、造り手から手に取る人へのある種の礼儀とメッセージが込められているからだと、私は思っています。

ヨーロッパのエチケット——歴史と誇りを纏っています。
フランスやイタリアのワインのエチケットには、厳格なルールがあります。
産地、格付け、生産者名など、記載すべき情報が細かく定められていて、デザインは控えめでシンプルなものが多いです。
でもそのシンプルさの中に、長い歴史と揺るぎない誇りが宿っています。
「この土地で、この方法で作られた」という事実だけで、すべてを語っています。
それがヨーロッパのワインのエチケットの哲学です。
土地と生産者の名前が、答えだからです。

ニューワールドのエチケット——自由と個性を纏っています。
一方、アメリカやオーストラリア、チリといったニューワールドのワインは、エチケットのデザインが全く異なります。
品種名やブランド名を大きく打ち出し、色鮮やかでアーティスティックなものが多いです。
動物のイラスト、抽象的なアート、遊び心のあるタイポグラフィなど、棚に並んでいるだけで目を引き、手に取りたくなるような豊かな表現が多いです。
歴史という重みの代わりに、個性と自由で勝負する、そういう潔さがあります。

同じ一枚のラベルでも、哲学が違います。
ヨーロッパのエチケットとニューワールドのエチケット。
同じ「ラベル」でも、そこに込められた文化と哲学はまったく異なります。
どちらが優れているということではありません。
ただ、エチケットを見れば、そのワインがどういう生き方をしてきたか、造り手が何を大切にしているかが、伝わってきます。
私がワインを選ぶとき、エチケットは必ず見ます。
数字やデータではなく、そこに込められた何かを感じることができるからです。

エチケットは、造り手から贈られるメッセージです。
単なるラベルではありません。
エチケットとは、このワインを造った人間が、手に取るあなたへ送る、メッセージだと思っています。
産地の誇り、品種への愛着、若い世代へ届けたいという想い…
それぞれの造り手の哲学が、一枚の紙の上に表れています。
だからこそ、エチケットのデザインを誰かのために特別に作るということは、単なるパッケージの話ではありません。

その人のために、メッセージそのものを作り直すということです。
それがどれほど特別なことか、ということを、いつかまたお話しできる日を楽しみにしています。
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